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ことばのいばしょ
ことばのいばしょ
展覧会概要
「ことばのいばしょ」は、人と人とのコミュニケーションの最も基本的な手段である「言葉」を作品のモティーフや手法とした同時代の表現を紹介する展覧会です。
今日、SNS等の普及により、個人の言葉が容易に、瞬間的に、大量に、パブリックな空間に発信されるようになりました。物理的な距離に捉われる必要がなくなり、コミュニケーションの回路は拡がった一方、次々とタイムラインに放たれ、反射的にキャッチされる言葉は、しばしばディスコミュニケーションの引き金ともなっています。
本展では、「言葉」に対する鋭敏な感覚を持った作家たちに依頼し、他者を理解するための技術である言葉が、その本来の、或いはあたらしい力を発揮する「居場所」としての作品を提示します。言葉ひとつひとつの密度、それを発した人の体温、紡がれた時間を反芻するような鑑賞体験が、私たちをとりまく世界や、それぞれの生を営む人びとへの想像力につながることを願っています。
出品アーティスト:
折笠良 小森はるか+瀬尾夏美
初谷むい×風間雄飛 文月悠光×土岐美紗貴 三角みづ紀×大泉力也 山田航×松浦進
企画:樋泉綾子(SCARTSキュレーター)
折笠良、小森はるか+瀬尾夏美
会期:2020年8月22日(土)~9月22日(火・祝)
会場:1F SCARTSコート、2F SCARTSスタジオ / SCARTSモールC
折笠良
《水準原点》《ことの次第》折笠良
石原吉郎の同名の詩を題材に、絶え間なく寄せる波に刻んだ文字の躍動によって一遍の詩の世界を表した《水準原点》と、原始の生命体のようにうごめく点と線が時折文字を紡ぎ、「言葉の誕生」を想起させる、環ROYの同名楽曲のミュージックビデオ《ことの次第》を上映します。 あわせて、両作品に関わる新作のドローイングと立体作品を展示します。
プロフィール
1986年生まれ、茨城県在住。茨城大学教育学部、イメージフォーラム映像研究所、東京藝術大学大学院映像研究科で学ぶ。詩や文学作品をモティーフに、言葉に質感や動きを与える実験的なアニメーション作品を制作してきた。作品は国内外で高く評価され、2015年に制作した《水準原点》は、ザグレブ国際アニメーション映画祭ゴールデンザグレブ賞、オタワ国際アニメーション映画祭最優秀実験・抽象作品賞、第21回文化庁メディア芸術祭アート部門優秀賞など数々の賞を受賞。2015年9月より文化庁新進芸術家海外研修員としてモントリオール(カナダ)に滞在、2018年10月にはNEFアニメーションとフォントヴロー修道院のレジデンスプログラムに選ばれフォントヴロー(フランス)に滞在。
小森はるか+瀬尾夏美
《みえる世界が小さくなった》小森はるか+瀬尾夏美
《みえる世界が小さくなった コロなか対話の広場》小森はるか+瀬尾夏美
2019年、“震災後、オリンピック前”の東京で暮らす3人の若者の関心事である“震災”“家”“友だち”をテーマにした映像やテキスト、コロナ禍における彼らの現在を捉えた新作映像とともに、瀬尾がコロナ禍の日々の感触を記録したテキストとドローイングを紹介します。 また、緊急事態のなかで私たちは何に気づいたのか、コロナウイルスとともにある暮らしとはどういうものかを考える場を設えます。
展示什器設計・制作:建築ダウナーズ
プロフィール
小森はるか(映像作家/1989年生まれ)と瀬尾夏美(アーティスト/1988年生まれ)によるアートユニット。2011年3月、ともに東北沿岸へボランティアに行ったことをきっかけに活動開始。2012年より3年間、陸前高田市に暮らしながら制作に取り組む。2015年、土地と協働しながら記録をつくる組織、一般社団法人NOOKを設立し、仙台に拠点を移す。 現在も、風景と人びとのことばの記録を軸に制作と発表を続けながら、対話の場づくりを行っている。おもな展覧会に「記録と想起-イメージの家を歩く-」せんだいメディアテーク/仙台(2014)、「キオクのかたち、キロクのかたち」横浜市民ギャラリー/神奈川(2017)、「第12回恵比寿映像祭」東京都写真美術館/東京(2020)など。巡回展「波のした、土のうえ」は、陸前高田など全国10カ所で開催。
言葉と版画、本の森
会期:2020年9月4日(金)~9月22日(火・祝)
会場:1F SCARTSモールA/B
札幌にゆかりのある4人の作家による詩集・歌集から、人と人との距離やすれ違い、孤独や愛情をテーマに選んだ言葉と、それに触発された4名の版画家による新作を展示。本を模した展示什器により、同時代の言葉と版画の生きる森が出現します。
初谷むい(短歌)
歌人。1996年兵庫県生まれ、札幌市在住。高校在学中、北海道高文連の文芸部門短歌分科会で講師を担当した歌人の山田航により、短歌部門最優秀作に選出される。2018年、書肆侃侃房の新鋭短歌シリーズとして第1歌集「花は泡、そこにいたって会いたいよ」を刊行。発売から2週間で重版が決まるなど、SNSを中心に話題を集める。短歌同人誌「ぬばたま」所属。短歌のほか、散文の作成、朗読などの活動を展開している。
風間雄飛(版画)
《むちう》 2016年 和紙にシルクスクリーン
版画家。1982年東川町生まれ、札幌市在住。記憶の姿をテーマに、主に版表現を用いた平面作品を制作。形を失い曖昧になった記憶の姿は鑑賞者の記憶とも干渉し、既視感や郷愁を感じさせる。道都大学でシルクスクリーンを学び、東京造形大学大学院造形学研究科修了。2009年「第3回秀桜基金留学賞」を受けドイツ留学。主な出展に 「トーキョーワンダーウォール公募2012入選作品展」東京都現代美術館/東京(2012)など。
文月悠光(詩)
詩人。1991年札幌市生まれ・東京都在住。16歳で現代詩手帖賞を受賞。高校3年の時に発表した第1詩集『適切な世界の適切ならざる私』で、中原中也賞、丸山豊記念現代詩賞を最年少で受賞。その他の詩集に『屋根よりも深々と』『わたしたちの猫』。近年は、エッセイ集『洗礼ダイアリー』『臆病な詩人、街へ出る。』が若い世代を中心に話題となる。NHK全国学校音楽コンクール課題曲の作詞、詩の朗読、詩作講座を開くなど幅広く活動している。
土岐美紗貴(版画)
《archive》 2015年 銅版画、ミクストメディア
版画家。1991年札幌市生まれ、在住。銅版画やシルクスクリーンをメインとした作品を制作。近年は紙面にとらわれない版表現を試みている。植物をモチーフとした銅版画は、儚くも力強い生命の美しさを感じさせる。2014年、札幌大谷大学芸術学部美術学科絵画分野版画専攻卒業。AOMORI PRINTトリエンナーレ2014入選。主な出展に、「JRタワー・アート・プラネッツグランプリ」プラニスホール/札幌(2013)など。
三角みづ紀(詩)
詩人。1981年鹿児島市生まれ、札幌市在住。東京造形大学在学中に詩の投稿をはじめ、2004年、第42回現代詩手帖賞を受賞。第1詩集『オウバアキル』で第10回中原中也賞を受賞。2013年、第55回ヴェネツィアビエンナーレ日本館のプロジェクトに参加。2014年、第5詩集『隣人のいない部屋』で第22回萩原朔太郎賞を最年少受賞。書評やエッセイ執筆も行うほか、朗読活動を精力的に続け、自身のユニットのCDを2枚発表している。
大泉力也(版画)
《揺れる月の為の月》2018年 スクリーンプリント
版画家。1987年富良野市生まれ、札幌市在住。「版を重ねることは、言葉を重ねること」という視点で制作された版画は、言葉的イメージによる心象風景を表現した詩的な世界を作り出す。道都大学美術学部卒業。2015年、第5回NBCシルクスクリーン国際版画ビエンナーレ展優秀賞受賞。主な出展に「北の脈-NorthLine-」500m美術館/札幌(2014)、個展「揺れる月の為の月」ギャラリー創/札幌(2018)など。
山田航(短歌)
撮影・アキタヒデキ
歌人。1983年札幌市生まれ、在住。2009年第55回角川短歌賞、第27回現代短歌評論賞。2012年、第1歌集『さよならバグ・チルドレン』を刊行。同歌集で第27回北海道新聞短歌賞、第57回現代歌人協会賞を受賞。歌集『水に沈む羊』のほか、『ことばおてだまジャグリング』、編著に『桜前線開架宣言 Born after 1970現代短歌日本代表 アンソロジー』がある。2017年より「小説 野性時代」誌の「野性歌壇」選者。
松浦進(版画)
《生きる犬と女、そして花-2019》2018年 木にシルクスクリーン、アクリル
版画家。1989年旭川市生まれ、札幌市在住。人間の内面をシニカルに捉えながら、それを西洋の肖像画のスタイルを咀嚼して表現し、アイロニーの中に独特のユーモアやエレガントさを感じさせる作品を制作。道都大学美術学部研究生修了。2015年、第10回秀桜基金留学賞を受け渡欧。アメリカ、イギリス、スイス、韓国、チェコ、オランダなど各国で作品を発表している。主な出展に「シェル美術賞2017」国立新美術館/東京(2017)など。
吉田慎司(詩歌選定)
中津箒職人、作家。1984年東京都生まれ、札幌市在住。 武蔵野美術大学造形学部彫刻学科卒業。伝統技術に自由な発想を掛け合わせ、前例のないモノづくりに挑む職人を発掘するLEXUS NEW TAKUMI PROJECTに2017年度「匠」として選出。現在、space1-15内で「生きるための道具と詩歌」をテーマに詩歌の本の販売や工芸品の展示会などを行う店「がたんごとん」内にアトリエを構え、歌会も主催している。
三木佐藤アーキ(展示什器設計・制作)
札幌市生まれの三木万裕子と、大分県生まれの佐藤圭が主宰する一級建築士事務所。札幌を拠点に全国で家具の設計製作から、住宅、公共建築の設計まで手がける。つくるプロセス・できた場の使われ方を考えることや、使われない物や関わる人の思いを活かすことを大切にしている。美深町のホテル「青い星通信社」、札幌市のカフェ「大人座」等。古い民家をリノベーションした自宅「house03」の隣に築100年越の馬小屋を改修中。
撮影:リョウイチ・カワジリ
展覧会図録 「ことばのいばしょ」
販売価格:1,500円(税別)/A5判、全96頁予定
発行所:中西出版株式会社
https://nakanishi-shuppan.co.jp/books/records/20220310-774/
- 日時
- 2020年8月22日(土)~ 9月22日(火・祝)
11:00~19:00
休館日:9月9日(水)
※SCARTSモールA・Bの展示「言葉と版画、本の森」は、9月4日(金)から始まります。 - 会場
- SCARTSコート SCARTSスタジオ SCARTSモール
- 関連イベント
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参加型パフォーマンス「環ROY - Fine Game」
日時:2020年8月22日(土)14:00~15:30
会場:SCARTSコート
パフォーマンス参加・観覧、ともに無料、事前予約制
ラッパーの環ROYとともに、言葉の意味や音・リズムによってイメージを広げながら、 連想ゲームのように言葉を繋げ、パフォーマンスを実施しました。▶詳しくはイベントアーカイブページをご覧ください。
▶レポート: 環ROY - Fine Game(PDF形式/2.85MB)折笠良 アーティストトーク
日時:2020年8月22日(土)17:00~18:00
会場:SCARTSコート
参加無料、事前予約制
登壇者:折笠良、環ROY
聞き手:大島慶太郎(映像作家)折笠良によるアーティスト・トークを開催。ゲストに環ROY、聞き手として大島慶太郎を迎え、折笠自身の言葉との関わり方や、アニメーション制作の裏側について、広く話を伺いました。
▶詳しくはイベントアーカイブページをご覧ください。
▶レポート: 折笠良 アーティストトーク(PDF形式/9.01MB)小森はるか + 瀬尾夏美 アーティストトーク&ミニワークショップ
日時:2020年8月23日(日)14:00~15:30
会場:SCARTSモールC
参加無料、事前予約制
登壇者:小森はるか、瀬尾夏美
ふたりのこれまでの活動や本展に向けての思いなどを語るトークと、参加者がコロナ禍という状況下での自身の感情や思考を振り返り、参加者同士でシェアする「対話のワークショップ」を行いました。
▶詳しくはイベントアーカイブページをご覧ください。
▶レポート: 小森はるか + 瀬尾夏美 アーティストトーク&ミニワークショップ(PDF形式/3.66MB)三角みづ紀×吉田慎司「言葉と版画、本の森」トーク
日時:2020年9月 オンライン配信
本展に詩を提供している詩人の三角みづ紀と、詩歌の選定を行ったほうき職人の吉田慎司の2人が、会場を歩きながら作品の紹介をします。
2人が展覧会の会場全体について簡単にご紹介します。
詩歌の一部を三角みづ紀が朗読し、詩歌の選定理由や、版画との組み合わせについて2人が語りました。SCARTSアートコミュニケーターによる鑑賞サポート
日時:2020年9月20日(日)11:00/14:00
※各1時間程度、予約不要
一方的な作品解説ではなく、アートコミュニケーターとお話をしながら作品鑑賞を楽しむプログラムを実施しました。SCARTSアートコミュニケーター×コロなか対話の広場
日時:2020年9月21日(月)~22日(火・祝)11:00~13:00
アートコミュニケーターが企画した2つのプログラムを実施。「あなたと私のことばのセッション~天使のぬり絵日記編~」では瀬尾夏美の「コロなか天使」に好きな色を塗り、今の気持ちを絵日記風に書き込んでもらいました。「あなたと私のことばのセッション~カードトーク編~」では、「コロなか研究ワークシート」とカードを使って、コロナ禍で感じていたことを参加者同士で話し合いました。book cafe 火星の庭・前野久美子さんのお話を聞く会
日時:2020年9月22日(火・祝)16:00~17:00
会場:SCARTSモールC
出演:前野久美子(book cafe 火星の庭 店主)
小森はるか+瀬尾夏美《コロなか対話の広場》内に設置された「コロなか文庫」の選書を手掛けた前野久美子を招き、選書の経緯を伺うと共に、参加者それぞれが気になった本のことなどについて語りあいました。 - 関連展示
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『ことばのいばしょ』関連書籍展示
日時:2020年8月22日(土)~9月22日(火・祝)
会場:札幌市図書・情報館
本展に合わせ、「ことば」に関連するアートの本を中心に図書館司書が選書した書籍を紹介しました。 - 主催
- 札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市芸術文化財団)
- 後援
- 札幌市、札幌市教育委員会
- 入場者数
- 6,576名
- チラシダウンロード