本日は開館日です
開館時間 9:00~22:00
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主催・連携事業
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西2丁目地下歩道映像制作プロジェクト
撮影 : Kenzo Kosuge
西2丁目地下歩道映像制作プロジェクトは、さっぽろ地下街オーロラタウンと札幌市民交流プラザをつなぐ「西2丁目地下歩道」を舞台にした映像制作プロジェクトです。4面プロジェクションで構成された横長のスクリーンと、歩行空間という特徴を生かしながら、多様で実験的な映像表現を探究しています。この場所のために制作された作品を年間を通して上映しています。
上映時間:9:00~21:00 ※隔週で上映スケジュールが入れ替わります。
【第1,3,5週】
空族 《ILHA FORMOSA》
9:00 / 10:30 / 11:15 / 12:00 / 13:30 / 14:30 / 15:00 / 16:30 / 17:15 / 18:00 / 19:30 / 20:30
小田香 《Underground》
9:15 / 10:45 / 12:15 / 13:45 / 15:15 / 16:45 / 18:15 / 19:45
アピチャッポン・ウィーラセタクン 《憧れの地 / The Longing Field》
9:25 / 10:55 / 12:25 / 13:55 / 15:25 / 16:55 / 18:25 / 19:55
野口里佳 《虫・木の葉・鳥の声》
9:45 / 12:45 / 14:15 / 15:45 / 18:45 / 20:15
大木裕之 《トシ シ》
10:00 / 11:30 / 13:00 / 16:00 / 17:30 / 19:00
スタジオロッカ 《UNDER UNIVERSE》
10:15 / 11:45 / 13:15 / 14:45 / 16:15 / 17:45 / 19:15 / 20:45
【第2,4週】
空族 《ILHA FORMOSA》
9:45 / 10:10 / 11:45 / 12:30 / 13:15 / 14:45 / 15:30 / 16:10 / 17:45 / 18:30 / 19:15 / 20:45
小田香 《Underground》
10:00 / 11:30 / 13:05 / 14:35 / 16:00 / 17:30 / 19:05 / 20:35
アピチャッポン・ウィーラセタクン 《憧れの地 / The Longing Field》
10:40 / 12:45 / 14:15 / 16:40 / 18:45 / 20:15
野口里佳 《虫・木の葉・鳥の声》
9:30 / 11:00 / 12:15 / 14:00 / 15:45 / 17:00 / 18:15 / 20:00
大木裕之 《トシ シ》
9:15 / 11:15 / 12:00 / 13:45 / 15:15 / 17:15 / 18:00 / 19:45
スタジオロッカ 《UNDER UNIVERSE》
9:00 / 10:25 / 13:30 / 15:00 / 16:25 / 19:30
西2丁目地下歩道映像制作プロジェクトでは、6作品を上映しています。
空族 《ILHA FORMOSA》[14分25秒 / 2023年制作]
イラ・フォルモサ(Ilha Formosa)とは、ポルトガル語で“美しい島”という意味で、大航海時代に台湾を訪れたポルトガル人にそう呼ばれたとされます。2022年8月に空族が台湾に赴き、台北、台南、高雄などの台湾島西側の都市のみではなく、中央山岳部の南投県、南部の屏東県、東部の台東県、花蓮県へも足を伸ばし取材・撮影しました。人々の暮らしに密接に関わる伝統音楽と祭りに加え、民族音楽に現代的な要素を混ぜ合わせるミュージシャンの多様な姿も記録しています。台湾の土地の歴史、日本との関係性を点描し、今の台湾の生き生きとした姿を映し出します。
空族はこれまで、日本を含むアジア諸国を舞台に、映画を中心とした映像作品を作ってきた。それぞれ作品の舞台となる場所で、実際に暮らす生活者たちがそのまま俳優として登場するという制作手法には、単なるシナリオハンティングに収まりきらない長いリサーチ期間を必要とする。そして、いつしか空族はそれらを作戦行動と称するようになる。
構想10年に及んだ空族の代表作『バンコクナイツ』(2016)では、長期に渡るタイでの準備期間を“先遣任務”、撮影を”本作戦“と位置付け、それらを報告書という形でまとめた書籍「バンコクナイツ 潜行一千里」(2017)や、メイキングドキュメンタリー映画『潜行一千里』(2017)、5画面を駆使した映像インスタレーション「潜行一千里」(2016)として発表し、あらゆる角度から作品に迫った。
本作『イラ・フォルモサ』の副題に「空族台湾先遣隊報告」とあるのは、近い将来、空族が台湾を舞台に作ろうとしている長編映画作品、つまり本作戦が控えているという事であり、映像インスタレーション「イラ・フォルモサ」はそのプロローグであり、空族が捉えつつある現代台湾の姿である。
空族・富田克也
<制作クレジット>
演出:空族
撮影:スタジオ石
録音&整音:Young-G
編集:富田克也、スタジオ石
アシスタント:田中隆ノ介
制作協力:光譜映像
映像制作集団・空族
空族とは、富田克也、相澤虎之助らによって2003年に結成された映像制作集団。代表作に『サウダーヂ』(2011)、『バンコクナイツ』(2016)など。山梨県甲府市を舞台にした映画『サウダーヂ』において、現地に実在するHIPHOPクルー "stillichimiya"の面々を主演の一角に迎えたことがきっかけとなり、次作『バンコクナイツ』以降、同郷の先輩後輩である両者が共作するようになる。因みに、stillichimiya内、映像ユニットが「スタジオ石」(Mr.磨&MMM)であり本作の撮影を担当。同じくstillichimiya のトラックメーカー Young-Gが、録音&整音を担当している。
小田香 《Underground》[9分37秒 / 2022年制作]
人間の記憶 ―私たちはどこから来て、どこに向かっているのか― を一貫して探究する小田香が、巨大な構造物のある札幌の地下空間に着目した映像作品。普段は立ち入れない不可視の地下に、プライベートな情景・洞窟・宇宙といったさまざまなイメージを投影し、16ミリフィルムで撮影している。人々の営みによって都市の地下に積み重なった時間を複線的に捉え直し、私たちが今立っている空間と時間の原初へと想像を導いてゆく。
地下の世界は真っ暗で、光で照らさないと何も見えない。うつらない。暗闇を光で照らす作業は、その空間を光で彫刻する行為のような気がした。照らし方によって、見える面が、その見え方が変化する。今回札幌で撮影した空間は、雨水を運ぶ管だったり、雪を溶かすための槽だったり、公園の噴水下、地下鉄のちょっと奥など、私たちの日常の隣にありえる場所だ。我々はそれらの空間を通して、宇宙に出た。138億年といわれる時空に接触を試みた。
何に耳を澄ませていたのだろう。石や星、家族の思い出、それらを繋ぐ穴たちを空間に投影することで、私たちはそこにある痕跡を見出そうとするよりは、私たちの痕跡を残そうとしてるのかもしれない。あるいは、古い跡に新しい跡を重ね、私たちもここに来たぞ見たぞ居たぞと、いくつも重なる層のひとつとして発信し、発見されたいのかもしれない。地下の痕跡はいずれ地上に顔を出すだろう。人間たちがいたことを表す層は綿々と積み重なっていく。
小田香
<制作クレジット>
監督/撮影/編集/サウンドデザイン:小田香
テクニカル・ディレクション/音響/グレーディング:長崎隼人
撮影・制作アシスト:三浦博之
プロデューサー:杉原永純
エグゼクティブ・プロデューサー:筒井龍平(トリクスタ)
撮影協力:札幌市交通局、札幌市下水道河川局、札幌市水道局、札幌市雪対策室、モエレ沼公園、シアターキノ
8mmフィルム投影映像提供:中島洋(「窓から海の揺れがみえた」)、中島ひろみ(「えにっき5 『水の日』 1991」)、佐藤朋子、小林昌三
協力:さっぽろ天神山アートスタジオ
小田香
1987年大阪府生まれ。フィルムメーカー/アーティスト。イメージと音を通して人間の記憶(声)―私たちはどこから来て、どこに向かっているのか―を探究している。2013年、映画監督のタル・ベーラが指揮する映画作家育成プログラムfilm.factoryに参加し、2016年に修了。ボスニア炭鉱を撮った長編第一作『鉱 ARAGANE』(2015)が山形国際ドキュメンタリー映画祭アジア千波万波部門にて特別賞を受賞し、各地の国際映画祭等で上映。『セノーテ』(2019)にて第1回大島渚賞を受賞。2021年、第71回芸術選奨文部科学大臣新人賞を受賞。
アピチャッポン・ウィーラセタクン 《憧れの地 / The Longing Field》[9分 / 2021年制作]
闇や光、夢や記憶が現実と重なる白昼夢のような作品で知られるタイ出身の映画監督・アピチャッポン・ウィーラセタクンによる映像作品。2020年、新型コロナウイルス感染症拡大に伴いロックダウンしたタイで過ごした静かな日々や、移ろう季節、首都バンコクで目にした若者たちによる抗議デモの様子が、まばたきのように交差する。作家の過ごしたコロナ禍の特異な時間を記録し、かつて滞在した札幌の友人たちへ宛てたビデオレター。
ロックダウンの数カ月間、私は友人でもある俳優たちを訪ねたいという強い衝動に駆られた。この特異な期間、俳優らがどうしてるのかを記録してみたかった。東北では、ジェンジラーがアメリカ人の夫のためにマスクを縫っていた。彼女は夫と一緒に暮らし、在宅で介護している。近くの街では、パティパーンが演奏会場を自作していた。彼はタイの伝統的な歌を唄う。南下すると、バンロップが有機野菜の畑を拡張していた。彼の畑は海の近くだ。
最後にバンコクだが、その地ではサクダーだけを訪ねた。彼は街の片隅で暮らす不法入国者に食料を配布している。社会的距離が叫ばれる中、この国では若者の軍事政権に対する反発が、前例がない規模の抗議活動へと発展した。私はバンコクで、その活動を追いかけ、数時間分の素材に撮りためた。街の通りは、不満と希望に満ち溢れていた。そんな若者たちによる熱を帯びた演説とは対照的に、それまで私の2020年は、だいたい自宅で静かにしていた。
木々が新たな葉を茂らせた。飼い犬が病気になり、その治療をした。バナナが熟し、マフィンにした。そんな移ろいの中、私の不眠症は改善していた。快眠できるようになり、長い夢をみるようになった。自分自身が夢で探求している、とも知った。たいてい夢と現実は双方が近づくまで影響しあうのではないか、と思った。吸引とでも呼ぼうか。起きている時、私は近所だけど今までに訪れたことがないような場所まで歩いたり、車で行ってみた。朝には、夢をメモすることもあった。昼には、山々や滝、地元の温泉を撮影したこともあった。
西二丁目地下歩道映像制作プロジェクトを構想する段階で、2001年に初めて札幌に滞在した時に出会った友人たちの写真を見てみた。タイで私が仲間を訪ねた時と同じ感情が、札幌の友達らに対しても広がった。そこで、友情の証として、ビデオレターをつくることにした。それは、私の2020年を伝えるビデオになる。植物、光、季節が移ろう香り、大勢の若者が発する活力、命が消えゆく哀愁、新たな春への動きを、ここに共有したい。
行ったり、来たりと巡りゆくものが、私に感謝の念を与えてくれた。ここに送る光の手紙が、大陸をまたいでも、私の憧れや愛情を共有する一助となることを願ってやまない。
2021年1月29日、チェンマイにて
アピチャッポン・ウィーラセタクン
<制作クレジット>
アーティスト:アピチャッポン・ウィーラセタクン
コーディネート:トモ・スズキ・ジャパン
制作管理:S-AIR
アピチャッポン・ウィーラセタクン
1970年タイ・バンコクに生まれ、タイ東北部イサーン地方、コーンケンで育つ。コーンケン大学で建築を学んだ後、シカゴ美術館付属シカゴ美術大学で映画制作修士を取得。1993年に短編映画、ショート・ヴィデオの制作を開始し、2000年に初の長編映画を制作。1999年に「Kick the Machine Films」を設立。既存の映画システムに属さず、実験的でインディペンデントな映画制作を行っている。長編映画『ブンミおじさんの森』で2010年カンヌ国際映画祭最高賞(パルムドール)受賞。映画監督として活躍する一方、現代美術作家としても映像インスタレーションを中心に旺盛な活動を行っている。2013年に福岡アジア文化賞を受賞。札幌との関わりとしては、2001 年に札幌を拠点に活動する NPO 法人 S-AIR の招聘により、札幌にて人生初の滞在制作を行っている。
大木裕之 《トシ シ》[12分 / 2020年制作]
カメラを手に国内外を旅し、移動を続けながら、映像作品はもちろんドローイングやインスタレーション、パフォーマンスなど様々な表現を行う作家・大木裕之による映像作品。30年にわたって撮りつづけてきた松前町(北海道)の映像や、札幌で出会った人々や風景、制作過程で生まれるドローイングなど、膨大なイメージが次々に重ねられていき、大木自身の言葉と時間が詩のように響き合う。
<制作クレジット>
監督・撮影・編集:大木裕之
編集:櫛引康平
大木裕之
1964年生まれ。東京都出身。高知県、東京都、そのほか各地拠点。映画監督/美術家。東京大学工学部建築学科在学中の80年代後半より映像制作を始め、89年~北海道松前町を中心にした映像作品群「松前君シリーズ」を開始、90年に「遊泳禁止」がイメージフォーラム・フェスティバル審査員特別賞を受賞、95年に「HEAVEN-6-BOX」が第45回ベルリン国際映画祭ネットパック賞を受賞。その表現活動は映像制作のみに留まらず、インスタレーション、パフォーマンス、ドローイングやペインティングにまで及ぶ。
野口里佳 《虫・木の葉・鳥の声》[13分 / 2020年制作]
被写体との独特の距離感をもった写真や、光そのままを捉えたような静謐な作品で知られる写真家・野口里佳による映像作品。目をこらさなければ見えないような小さなものに光をあてた作品をつくりたいと、野口が現在拠点とする沖縄の山の中で撮影された。虫や葉の生き生きとした動き、不思議な響き方をする鳥の声が、沖縄の瑞々しい空気を感じさせる。
<制作クレジット>
監督・撮影・編集:野口里佳
野口里佳
1971年生まれ。さいたま市出身。那覇市在住。写真家。94年日本大学芸術学部写真学科卒業。大学在学中より写真作品の制作を始め、以来国内外で展覧会を中心に活動。微視と巨視を行き来するような独自の視点、人間の謎に触れるような対象の選択、その透明な色彩と詩情豊かな表現力は国内外から高い評価を受け、写真の世界だけにとどまらず現代美術の国際展にも数多く参加している。国立近代美術館(東京)、グッゲンハイム美術館(ニューヨーク)、ポンピドゥー・センター(パリ)などに作品が収蔵されている。
スタジオロッカ 《UNDER UNIVERSE》[13分40秒 / 2019年制作]
札幌を拠点に、映像技術を用いてさまざまな作品を手がける映像チーム・スタジオロッカによるアニメーション作品。”不時着したウサギ”をモティーフにした、テイストの異なる3つの小作品からなる三幕構成で、カメラで撮影したモデルの動きをトレースしてアニメーションに起こしていく「ロトスコープ」の手法によって、躍動感溢れるダンサーの動きを取り込んでいる。
<制作クレジット>
プロデューサー:松永芳朗
アニメーション:松本ナオヤ、小笠原大、大内りえ子
音楽:高橋慶
ダンサー:小田川奈央、金愛珠、牧野彩季、山根海音
ロトスコープ:中川仁史、上野里桜、大水ひかる、瀧本夕貴、高橋歩
協力:大島慶太郎、南俊輔、高野桃子、松永千絵
STUDIO ROCCA(スタジオロッカ)
札幌を拠点に活動する映像チーム。民族文化や伝統工芸などの題材を中心として、映画やテレビ番組およびアニメーションやプロモーションなどの映像コンテンツを制作している。
https://www.studiorocca.jp
主催:札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市芸術文化財団)