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2025年4月26日(土)
札幌文化芸術劇場 hitaru
「Creative Art Mix Vol.3 Classical Jewels DX~New World~」オンライン配信 レビュー(吉田悠樹彦氏)
2025年2月9日(日)、札幌文化芸術劇場 hitaruにて盛況のうちに終了いたしました「Creative Art Mix Vol.3 Classical Jewels DX~New World~」のアーカイブ配信が5月30日(金)まで実施中です。
吉田悠樹彦氏による公演レビューを公開いたします。
北海道からAI時代ならではの伝統や枠にとらわれない新しい芸術を
吉田悠樹彦
札幌文化芸術劇場hitaruは高機能劇場でありクラシックやジャズ、バレエ、舞踏、ストリートダンスからコンテンポラリーダンスまで幅広いジャンルを担ってきた。2024シーズンは2045年という近未来に到来するシンギュラリティを見据えながら古代から現代にいたる人類社会の歩みを舞台作品にした。「Creative Art Mix Vol.3 Classical Jewels DX~New World~」(2025年2月9日(日)、札幌文化芸術劇場 hitaru)は北海道を中心に音楽とバレエ、舞踏、コンテンポラリーダンスを様々な文脈を伝統にとらわれずにミックスし、先端的なテクノロジーを取り込みながら新しいアートとして発信する。
舞台芸術としてクオリティの高いコラボレーションである。音楽も身体表現も共に人類のこれまでの歩みから未来を上手に拓こうとしている。テクノロジーの側の音楽とビジュアル表現もAI時代ならではのきめの高い表現といえる。近未来的なテーマを実在する人間が演じている感覚を重視しながら描く世界を通じて人類の未来を垣間見ることができる作品が生まれた。
一昔前であればブリコラージュといわれるような異なったものと異なったものを組み合わせる感覚を持ちながら、テクノロジーを通じて既存の枠組みにない表現を探求する。そこに身体表現の先端が絡んでいく。例えばバレエの躍動する身体、舞踏が切り出す鋭い表情、音を彩るヒップホップやポップダンスの弾ける身体、それぞれの変化を本作では楽しむことができる。踊りだけではなく音楽のインストルメンタルの場面やオペラも加わり、ジャンルごとの予期せぬ出会いと融合から生まれてくる新しい世界も楽しむことができる。
北海道は音楽で良く知られている。伊福部昭が注目をされる昨今だが、国内のみならず海外からも脚光を浴びるシーンを形成してきた。身体表現では北海道は舞踏やコンテンポラリーダンスのフェスも行われている。札幌の大通公園の泉の像のバレリーナたちはシンボリックだが、熊川哲也を送り出したこの土地から独創的な振付家が登場することが望まれている。
首都圏ほどジャンルやしばりがないことが機能し、さらに国際空港から日本に捉われずに世界に直につながれるため優れた才能が世界へ羽ばたき続けている。彼らの表現と現地のメディアや産業と連動して独自な文化圏を作ることに期待がかかる。この新しい試みを応援したい。
吉田悠樹彦
ダンス批評家・評論家
舞台芸術ではバレエ・ダンスからパフォーマンスに至るまで身体表現に関して評論を展開する。メディア芸術ではレニ・リーフェンシュタール論を新しい科学と芸術のジャーナル『Technoetic Arts』(ロイ・アスコット編)に発表しPrix Ars Electronicaデジタル・コミュニティ部門国際アドバイザー(2005-2009)を務めた。映像ジャンルでは東京ドキュメンタリー映画祭やドキュメンタリーカルチャーマガジンneoneoで活動する。
共編著のneoneo叢書「ジョナス・メカス論集」(2020)、Routledge Companion to Butoh Performance(2019)、 著作多数。
北海道の舞台芸術や音楽とも2000年代から接してきている。
「Creative Art Mix Vol.3 Classical Jewels DX~New World~」オンライン配信
詳細・視聴はこちら→
https://www.sapporo-community-plaza.jp/event.php?num=4304