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さっぽろウインターチェンジ 2019
アーカイブ展 「What’s winter art? ─冬のアートを辿る─」
「さっぽろウインターチェンジ 2019」のプログラムのひとつとして、北海道の冬に実施されてきたアート・プロジェクトを紹介する展示を行いました。
展示概要
1950 年から始まった「さっぽろ雪まつり」を筆頭に、厳しい冬だからこそ、その寒さや雪を逆に活用して楽しむ工夫が北海道各地で数多く試みられてきました。そのなかには、アートによる様々なアプローチもみられます。氷雪像づくりはもちろんのこと、多様な手法で北国の冬の特性と積極的にかかわった作品やプロジェクトが脈々と展開されてきたのです。
この展示では、それらを年表でたどるとともに、注目すべきプロジェクトをパネル展示や関係者のインタビュー映像などにより紹介しています。その連なりは、この地で活動する意義の模索、そして、この地ならではの新しい表現探求の系譜ともいえるのではないでしょうか。
監修:吉崎元章(SCARTS プログラムディレクター)
調査協力・データ提供アートとリサーチセンター/さっぽろ天神山アートスタジオ
北海道の冬のアート・プロジェクトの紹介
雪と氷の造形展
札幌市内・近郊の彫刻家などに雪や氷を素材とした作品の制作を依頼し、園内に約1週間展示した。北海道内の雪まつりなどに多くみられる、有名建築物の精巧な再現やアニメ等のキャラクター像とは異なる、美術家による造形性を求めた作品が、冬ならではの新たな表現を生み出した。雪による彫刻としての完成度を競うフィンランドやカナダの雪像コンクールをヒントに始められ、札幌芸術の森の広大な敷地や雪国ならの特性を生かした新たな美術展としての可能性を示したが、経費等の問題から3回で中断している。しかし、雪像の造形性を求める動きは、さっぽろ雪まつりで1974年から続く「国際雪像コンクール」にみられるほか、「なよろ国際雪像彫刻大会ジャパンカップ」(2001年~)や「さっぽろ雪像彫刻展」(本郷新記念札幌彫刻美術館、2010年~)などに受け継がれている。
アーティスト・イン・スクール
「転校生はアーティスト」と銘打ち、アーティストが一定期間(数週間から数ヶ月)小学校に通い、空き教室などの学校の余剰空間をアトリエとして活用しながら創作活動を行い、子どもたちや地域と交流するプロジェクト。さまざまなアーティストの表現や価値観、生き方に触れることが、学校や地域の日常に普段とは異なる視点をもたらし、いままでにない他者との関わりを育む学校そのものの場の可能性を考えるきっかけとなることを目指して活動を展開している。
スノースケープモエレ
世界でも数少ない「雪」をテーマとしたアートフェスティバルとして、札幌の冬の文化を世界に発信することを目指し、モエレ沼公園がグランドオープンした2005年から2012年までに7回開催。イサム・ノグチが基本設計した冬のランドスケープをひとつの主役として、年毎にさまざまなアプローチによって、雪による建造物や、雪原での作品設置、フォーラム、ワークショップ、コンサート、パフォーマンス、雪中カフェなど、この場所ならではの独創的なプロジェクトを屋内外で展開した。公園とアートNPO、市民団体が協働して運営。
Sapporo 2 Project
2006年にアーティストKamiel Verschuren(カミーユ・フェルシュフーレン、オランダ)によって提唱されたオープンコンセプトに賛同した有志によるアートプロジェクト。“いつもの、現実の札幌”をSAPPORO1、雪の降っているときの札幌を、現実=いつもの札幌にパラレルに存在するもうひとつ別の世界=”SAPPORO2”と名付けている。このプロジェクトはあくまでもプラットフォームであり、毎年、アーティストが実験的な活動を独自に行うことを特徴としている。社会的な視点、批評的な態度で「都市、コミュニティ、冬、雪」という現実を観察し、そこに反応するようにアイデアを出していくトレーニングでもあり、除雪行為を創造的活動として営み、社会との新たな関係を構築することも試みられた。
ウィンターサーカス
北海道の地域資源である「雪」をつかったランドアートをアーティストが発想し、地域の人達が制作をサポートするアートプロジェクト。初回は旭川市西神楽の一会場からスタートし、徐々に会場を増やしながら、「シーニックバイウェイ大雪・富良野ルート」の旭川と占冠を結ぶ沿線や高速道路のサービスエリアなど広域に作品を設置。2009年以降は7会場で実施。全10回開催。 毎年初日から2日間の17:00~20:00をメインの会期とし、ライトアップや映像上映、温かい飲食の提供、バスツアーなどのイベントを集中的に行った。さらに、雪のオブジェが春の訪れとともに少しずつ溶けてなくなるまでをこのプロジェクトと位置づけ、太陽光や気温、降雨など自然の力で変わっていく形や季節の変化を楽しんだ。
防風林アートプロジェクト
十勝の原風景ともいえる耕地防風林と周辺の雪原を舞台に、最も寒さの厳しい季節に開かれた野外アート展。2011年の「真正閣の100日」に続く「帯広コンテンポラリーアート」の一環として開催された「防風林アートプロジェクト2013-14」のメイン企画であり、北海道在住の美術家を中心に道外作家を加えた47作家が参加した。
広大な雪原の上や、防風林の木々に絡めて設置された作品は、ここの環境がもつ、寒さ、強風、雪原、樹列、さらには開拓の歴史や農地であることなどの特性と向き合い、それらといかに関係するかを考える姿勢によって、造形物や素材を持ち込み展開したものである。厳しい寒さを利用し、現場に泊まり込んで氷柱を成長させた作品や、強い風を受けて廻ったり音が鳴る作品、雪が積もることで成立する作品などもあった。会期中に吹雪で飛ばされたり、雪で埋もれても、自然と作品とのコラボレーションであると位置づけ、作品の一部ととらえる方針をとったことも特徴のひとつである。
さっぽろユキテラス
2014年7月にオープンした「札幌市北3条広場“アカプラ”」を舞台に、札幌の特徴の一つでもある“雪と光”をモチーフにして冬の魅力を発信するプロジェクトとして2015年に始まった。厄介者として扱われがちな雪や寒さを、この街ならではの資源ととらえ、アーティストの創造力で魅力を演出し、この冬のこの場所でしか生まれないサイトスペシフィックな体験を提案している。さっぽろ雪まつり協賛事業でもあり、会期をほぼ合わせて開催され、9~10日間の会期中に3万人近い市民や観光客が訪れる。2017年からはアイスバーも併設されている。
さっぽろ垂氷まつり
北国の暮らしにとって身近な存在である「つらら」を切り口に、アート、サイエンス、人の営みやその記憶といった多様な視点から、札幌の冬を再発見する新しいお祭りとして、2016年から毎年開催。「さっぽろ 雪まつり」のほぼ時期を合わせ、大通公園の西端の札幌市資料館の館内や前庭、裏庭などが会場となっている。「垂氷(たるひ)」とは、「つらら」の古語名。 会期中、展示やワークショップ、トーク、ハッカソン、アクセサリー販売などさまざまなイベントが催される。なかでも、360度に伸びるつらら「回転式巨大つらら造形装置」や、コンピュータ制御し人工的につくりあげるつらら「人工氷柱製造装置」は、2016年から毎年バージョンアップを繰り返し、この事業の象徴的なものとなっている。
2017年には、「つららと建築」「札幌の冬の暮らし」に焦点をあてたプログラムが展開され、2019年は「環境」というテーマに着目して行われる。
北海道の冬のアート・プロジェクト年表
北海道の冬のアート・プロジェクト年表(PDF形式)
冬季に北海道内の屋外を主な会場として開催されている数多くの催しのうち、アーティストがなんらかのかたちで かかわったものを、次の傾向別に分類して時系列でまとめています。
- 雪や氷による像や建造物を中心とした冬を楽しむためのまつり/観光イベント
- 雪や氷で屋内空間を創出するプロジェクト
- 雪や氷以外の造形作品や発光体を冬の屋外に設置するプロジェクト
- 雪や氷を素材とした立体造形としての作品を制作するプロジェクト
- 雪国の生活や営み、自然現象などと深くかかわる新たな表現を探求するプロジェクト
- 積雪を取り入れたプロジェクト
冬のアート・プロジェクト関係者へのインタビュー映像
初期の「さっぽろ雪まつり」、岡本太郎デザインの雪像づくり(1980年)について
「あさひかわ雪あかり」について
ウィンターサーカス(2006~2015年)について
「雪育」「雪しぐさ」「雪育アート」について
「Sapporo 2 Project」(2006年~)について
「スノースケープモエレ」(2005~2012年)、
「カナコ雪造カンパニー」(2008年)、
「アーティスト・イン・スクール」(2008年)に参加して
「防風林アートプロジェクト」(2014年)について
Snow Pallet Project(2011年~)について
- 日時
- 2019年2月1日(金)~ 6日(水)
10:00~18:00 - 会場
- SCARTSコート
- 主催
- 札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市芸術文化財団)
- お問い合わせ先
- 札幌文化芸術交流センター SCARTS(札幌市中央区北1条西1丁目 札幌市民交流プラザ2F) TEL:011-271-1955(平日9:00~17:00) Email:scarts@sapporo-caf.org
- 入場者数
- 1,036名