横須賀令子
茨城県ひたちなか市生まれ。1981年専門学校卒業製作「幻」(16mm)から短編アニメーション制作を始める。和紙に墨で描く筆絵ならではのタッチや、にじみを生かした独特の世界観の手描きアニメーションを多数発表。NHK「みんなのうた」などのTV番組やCMのアニメを手掛けるほか、海外の映画祭での上映も多数。
96年3月より札幌に移住。
YouTube
https://youtube.com/@reikoyokosuka
BOOTH「墨の庭アニメーション」
https://reikoyokosuka.booth.pm/
そよ風がやさしく吹きわたる春の情景。画面から飛び出してくるような荒々しい波のうねり。そしてそこに息づく、恐ろしくも生命力にあふれた「もののけ」や動物たち。
40年以上にわたり、墨絵アニメーションの制作に取り組んできた横須賀令子氏。現像が必要な8ミリや16ミリのフィルム時代から、ビデオの普及期、そして映像ソフトを用いてパソコン上で仕上げる現在まで、動画化する手段は移り変わっても、1コマずつ、1枚ずつ、丁寧に描く手法は今も変わりません。
「昨年、これまでの作品やメイキングをまとめた書籍を出版した際に『ただ映像を流すだけではなく、いろんな見せ方の可能性があるんじゃないか』と気づいたのが、今回の企画公募に応募したきっかけです。手描きの素材感のある作品を4面の壁に投影しますが、これは私にとっても初の試み。さらにたくさんの原画を布に貼り、天井からぶら下げて連続的に展示するなど、見せ方にも工夫を凝らすことで、手描きアニメーションの魅力を多面的に伝えられればと考えています」
横須賀氏といえば、和紙に墨と筆で描くモノトーンの作風で知られていますが、一方で水彩や色鉛筆をはじめ、さまざまな画材を駆使した鮮やかな作品も。一部は横須賀氏のYouTubeチャンネルで公開中です。
ライトテーブルのトレース台の上で1枚ずつ筆を入れていく。着想のきっかけはさまざまで、イメージスケッチからアイデアを膨らませることもあれば、音楽がヒントになることも
実際の制作にあたっては、まずイメージスケッチ(下描き)で大まかな構成をつくるところからスタート。1秒間に必要な原画の枚数は8から12枚で、トレース台の上で1枚ずつ墨をのせ、彩色していきます。これらの原画をスキャンして微調整し、そのデータを映像ソフトで動画化。編集、音入れを施して完成というのが大まかな流れとなります。映像分野はデジタルが主流になりつつありますが、墨や和紙を生かした表現もまだまだ奥が深そうです。
「散策が好きなんですが、札幌の自然の中を歩くとアイデアが浮かんで、どんどん描きたくなります。今回の個展が、手描きアニメーションの魅力に触れていただくきっかけになればうれしいですね」