2025
OCT-NOV

10-11

池田 亮

Ryo Ikeda

ゆうめい代表・劇作家・演出家・脚本家・造形作家。1992年8月31日、埼玉県春日部市生まれ。東京藝術大学大学院美術研究科彫刻専攻修了。梅田芸術劇場所属。13歳から原体験をもとにした小説を匿名でネット上に発表。2015年「ゆうめい」を結成し、全作品の作・演出、多くの美術を手掛ける。2024年『ハートランド』で第68回岸田國士戯曲賞を受賞。2025年『養生』で第32回読売演劇大賞優秀演出家賞を受賞。ほかに『テラヤマキャバレー』(演出:デヴィッド・ルヴォー、主演:香取慎吾)脚本、『球体の球体』(主演:新原泰佑)脚本・演出・美術など。

ゆうめい

yumei

舞台・映像・美術・文章を発表する団体として2015年に設立。原体験や、体験ルポ・アニメ・ドラマ等での労働経験を積んだ結果、反動的にも生まれた戯曲と美術、現在と劇を往復する空間演出が特徴。ゆうめいの由来は、「夕と明」「幽明」生命の暗くなることから明るくなるまでのことなど。

「もどらない。」
労働と生活と芸術の
リアルを描く話題作。

――ゆうめいとしては、初の札幌公演になります。まずは札幌の皆さんに向けて、自己紹介をお願いします。
ゆうめいは、2015年に旗揚げした団体です。元々は演劇や舞台、映像、美術など、いろんな創作活動を行っていましたが、現在は演劇が中心になっています。そして結成10周年の集大成として「6都市全国ツアー」を開催することになり、その一環で今回の札幌公演が実現しました。

――池田さんの作品は、ご自身や周りの人たちの原体験がベースになっているのが特徴です。『養生』の舞台は、夜勤の現場。一見ユーモラスながら、ブラックな現場で働いたことがある人なら、思わず身につまされるようなリアルな人間模様が繰り広げられます。
東京藝大で彫刻を専攻していた頃、材料となる石の予算を捻出するために、いろんな夜勤のバイトを入れまくっていました。例えば、当時経験したあるコンサートの会場設営では、アルバイトにとってはとても過酷な現場で、そのバイトを使う側も極限まで追い詰められていたりして、ものすごい空気になっているんですよ。そんな生々しい人間ドラマの渦中に放り込まれた時に「これは自分の彫刻じゃあ、まったく太刀打ちできないな」と思ってしまって。そうした現場の空気感や強烈な体験が、そのまま『養生』の物語に生かされています。

――前作の『ハートランド』で岸田國士戯曲賞を受賞していますが、影響はありましたか?
実は『ハートランド』は集客がまったく伸びず、700万円ぐらい赤字を背負ってしまったんです。自分のやりたいことを突き詰めすぎた結果だったのかもしれません。これまでも、たとえば『姿』という作品では、両親の熟年離婚をリアルタイムで舞台化し、実の父を出演させるなど、自我を出しまくった作品を発表してきました。そんな中、「これからはもっと多くの人に楽しんでもらえるコンテンツをつくらなきゃ」と思っていたタイミングで、『ハートランド』が岸田國士戯曲賞を受賞しました。そして、原点でもある創作のためにバイトに励んでいた大学時代を思い出して、夜勤でお金を稼ぎつつ、自我路線とエンタメの中間ぐらいのバランスを意識して『養生』をつくり上げました。

――『養生』の制作にあたっては、実際に夜勤として働いたというのは本当ですか?
『養生』の創作とちょうど同時期に、『テラヤマキャバレー』という舞台の脚本も担当していまして、リサーチのために近くで夜勤のバイトを入れたら、偶然その稽古場のバラシの仕事だったんですよ。さっきまで脚本家として同席していた現場に変装してバイトで入ったりして、一体何をしているんだという(笑)。実は今回の「6都市全国ツアー」でも、三重では深夜のゴルフ場でゴルフボールを拾ったり、京都ではコンビニのレジ打ちのヘルプに入ったりと、下見が終わった後に夜勤で働いています。札幌でもこの後、仕事を探す予定です。

――では最後に、改めて見どころを教えてください。
劇場で席に着く前から、そして劇場を出た後も、皆さんの日常と劇世界がグラデーション化して溶け込むような空間になれば、と考えています。内容も初演時よりももっと彫り込んでバージョンアップする予定です。皆さんの過去の体験や記憶に何かしら引っかかるような物語になると思いますので、ぜひとも会場で楽しんでいただければ幸いです。

Story

美大生・橋本(本橋 龍)と、大学生・阿部(丙次)はショッピングモールや百貨店の内装作業を行う夜勤バイトで出会い、意気投合。当たりがきつく家庭内不和の渦中にいる正社員に陰で不満を漏らしながら「卒業したら、こうはならない」と笑い合う。――数年後、二人はその夜勤のバイトから正社員になっていた。阿部は家庭を持ち、新入社員・清水(黒澤多生)の教育を任される。一方、作家を目指していた橋本は、著名作家となった同期が百貨店の人気ギャラリーで個展を開催することを知り、そのディスプレイ設営を担う。喪失した過去と現在とが対峙をしつづける、夕方から明け方への話。

ゆうめい「養生」

作・演出・美術/池田 亮
出演 /本橋 龍(ウンゲツィーファ)、黒澤多生(青年団)、丙次

2025 12.6[土]・7[日]
6日[土] 18:00開演 (17:30開場)
7日[日] 13:00開演 (12:30開場)
※受付開始は各日開演1時間前

クリエイティブスタジオ

プラザメンバーズ先着先行発売:9月26日[金]
一般発売:9月27日[土]

[全席自由・税込]
一般 3,500円、U25 2,000円

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①基礎・実践編 11月30日[日]・12月7日[日]
講師:丹治泰人(演出家・演出進行)

②特別レクチャー編 12月 8日[月]
講師:徳永京子(演劇ジャーナリスト)

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