
北海道中の輝く才能が一堂に会し、夢と魔法、人間愛に満ちた世界を届ける、hitaru版「くるみ割り人形」。
2023年12月の初演では、札幌が誇る振付家・千田雅子が手掛ける芸術的なソロ、研ぎ澄まされたコール・ド・バレエが、珠玉の美術・照明・衣裳と融合し、5,600人を超える観衆を舞台芸術による感動で包みました。
2026年冬、北海道のバレエ史におけるひとつの到達点といえる本作を、オーディションによる新たなキャスティングと、さらに深化した内容により再び上演。
ゲストダンサーとして魔法の国の女王役に中村祥子氏、魔法の国の王役にヴィスラフ・デュデック氏が出演します。
今回は中村祥子氏に公演に向けての思いを伺いました。
※従来、「金平糖の精」「王子」と呼ばれている役につき、本作品では「魔法の国の女王」「魔法の国の王」として登場します。


ゲストダンサー ◎魔法の国の女王
中村祥子
Shoko Nakamura
●K-BALLET TOKYO 名誉プリンシパル
佐賀県生まれ。1986年〜野村理子バレエを経て、田中千賀子バレエで学ぶ。96年ローザンヌ国際バレエ・コンクールでスカラーシップ賞/テレビ視聴者賞受賞。96年〜ドイツ、シュトゥットガルトのジョン・クランコ・スクールで学ぶ。98年シュトゥットガルト・バレエへ研究生として入団。2000年ウィーン国立歌劇場バレエ入団、01年ドイツ、ルクセンブルクコンクールで1位受賞。02年ソリスト昇格。06年ベルリン国立歌劇場バレエ入団、07年プリンシパル昇格。13年ハンガリー国立歌劇場バレエ入団(プリンシパル)。15年9月より日本を拠点にし、K-BALLET COMPANY(現K-BALLET TOKYO)に在籍。18年第39回橘秋子賞優秀賞受賞、20年第34回服部智恵子賞受賞。20年に退団と同時にK-BALLET TOKYO名誉プリンシパルとなる。現在はフリーのダンサーとして精力的に活動中。主なレパートリーはマラーホフ版「眠れる森の美女」のオーロラ姫、バランシン振付「チャイコフスキー・パ・ド・ドゥ」、ベジャール振付「ニーベルングの指輪」、プレルジョカージュ振付「白雪姫」、マクミラン振付「マノン」ほか。Kバレエカンパニーでは、熊川版「くるみ割り人形」のマリー姫、「シンデレラ」「ジゼル」のタイトルロール、「ロミオとジュリエット」のジュリエット、「白鳥の湖」のオデット/オディール、「ドン・キホーテ」のキトリ、「眠れる森の美女」のオーロラ姫、熊川振付「カルメン」のタイトルロール、プティ振付「若者と死」の運命の女などを踊っている。初演キャストとしては「クレオパトラ」のタイトルロール、「マダム・バタフライ」の花魁、金森穣振付「アンダンテ」、平原慎太郎振付「浜辺のアインシュタイン」のブライドがある。
中村祥子インタビュー
——まずはhitaruバレエプロジェクトに参加する思い、公演に向けての意気込みをお聞かせください。
「くるみ割り人形」の作品を踊ることは私にとってとても久しぶりで、4年ぶりになります。そして、パートナーであるヴィスラフにとって王子役は、彼が学校の卒業公演で踊ったのが最後で、30年ぶりとのことです(笑)。ただ、私を含め、ダンサーたちは毎年同じ作品を踊っているとしても、毎回が新たな取り組みとして、新鮮な気持ちで挑んでいます。今回hitaruバレエプロジェクトでこのような機会をいただき、今までご一緒したことのないダンサーたちや関係者の方々とひとつの舞台を作り上げることはとても楽しみであり、新しい挑戦として向き合っていきたいと思っています。
——お二人にとって、バレエ「くるみ割り人形」はどのような演目ですか?
私はさまざまな振付家の方の「くるみ割り人形」を踊ってきましたが、やはりこの作品は子どもから大人の方まで幅広い層に愛され好まれていて、観ていて心が幸せにあふれる作品だなと思います。ヴィスラフは学校卒業公演以来、作品を導くキーパーソンであるドロッセルマイヤーとして踊ることが多く、この作品を始まりから終わりまで引き立てていく役柄だったので、とてもやりがいを感じながら踊っていたようです。


——今回、hitaru版「くるみ割り人形」を映像でご覧いただきましたが、いかがでしたか?
美しいセットの中にクオリティー高く指導されて演じている子どもたちやダンサーたちがいて、一人ひとりがその場にあった世界観を作り上げ、楽しんで踊っている様子が映像からも感じられました。私たちもその中で一緒に踊ることをとても楽しみにしています。
——バレエダンサーとして大切にしていること、こだわっていることは何ですか?
私がダンサーとして大切にしているのは、ひとつの作品における瞬間ごとの世界観を大事にすることです。バレエは総合芸術なので、本番がスタートした時からみんなの気持ちと力がさらに合わさっていくことで、その瞬間にしかない空気感が生まれます。そして、まずは私たちがその空間を楽しむことで観客の皆さまに自然と舞台の魅力が伝わっていくのではないかなと思っています。

——オーディションによって選ばれたダンサーにより、札幌文化芸術劇場 hitaruを舞台とした本格的なバレエ作品を創造する「hitaruバレエプロジェクト」。地域から新たな作品を発信していくことに、期待感などはありますか?
若いダンサーはもちろんのこと、プロのダンサーたちも舞台に立つことで新たな刺激を受け成長していきます。私自身もそうでしたが、若いダンサーは特にプロのダンサーが舞台へ向かう姿を見ることで刺激を受けたり、夢が広がっていくものです。このような素晴らしいプロジェクトを通してたくさんの夢や目標が広がり、さらにそんな若いダンサーたちを応援してくださる方々にも、バレエ芸術が幅広く浸透していけばうれしいなと思います。
——お二人と共にステージを作ることを楽しみにしている若きダンサーたちにメッセージをお願いします。
踊りには自分自身のこだわりや意識、思いが表れます。ただ教えてもらった振り付けを踊るだけでなく、作品や役の意味も自分なりの意志や思いをもって踊れるともっと楽しくなるし、観てくださる方にも魅力的な踊りとして伝わっていくと思います。私たちも皆さんと舞台を共にできることを楽しみにしています。
——最後に、読者、観客の皆さまに向けてメッセージをお願いします。
素晴らしいプロジェクトに参加することができ、とてもうれしく思っています。ファンタジーあふれる「くるみ割り人形」の世界を、若いダンサーの皆さんと共に作り上げていけることを楽しみにしております。皆さま、劇場でお会いしましょう。


ゲストダンサー ◎魔法の国の王
ヴィスラフ・デュデック
Wieslaw Dudek
ポーランド生まれ。 ウッチ・バレエスクールを卒業し、1996年に「ポーランドにおけるバレエ学校の最優秀卒業生」賞を受賞。卒業後は、ワルシャワ国立歌劇場を経てポーランド国立ウッチ歌劇場に入団しプリンシパルとして活動。その後、シュトゥットガルト・バレエに移籍。2003年にはベルリン国立バレエ団にてソリストとして入団し、2005年からはプリンシパルを務め多くの国際的振付家より高評価を得る。ダンサーとして世界各国で活動し、名だたるバレエ団との活動も積極的に行う。自身の活動で特に注目に値するのは、2013年にポーランド人として初めてボリショイ劇場にてジョン・クランコによる「オネーギン」にて主演を務める。その他、世界各国のコンクールなどで審査員を務め、数多くのワークショップ等でも講師としても活動している。2015年より活動拠点を東京へ移し、シュトゥットガルト・バレエ、ジョン・クランコ・スクール、東京シティバレエよりゲスト講師として招聘されるなど 、現在も国内外問わず活動。自身が創設し監督を務める、ポーランドと日本のプロジェクト「Youth Spirit of Dance」は現在も継続的に活動し、世界的に大成功を収める。最近では自身のさまざまな活動が認められ、ポーランド文化芸術大臣や、彼の故郷のオストルフ・ビエルコポルスキより多くの国際的な賞を受賞。

hitaru バレエプロジェクト
くるみ割り人形〈全幕〉
演出振付:千田雅子(札幌舞踊会代表)
2026 2.28[土]・3.1[日]
札幌文化芸術劇場 hitaru
チケットは9月下旬発売予定!