94歳の今も活躍を続ける創作舞踊家・能藤玲子氏が、
彫刻家・砂澤ビッキの代表作《神の舌》を舞台美術として挑む新作が2026年1月23日(金)〜25日(日)に上演されます。
作品にどのような思いを込め、どのような世界が繰り広げられるのか?
能藤氏にお話を伺いました。
94歳の今も活躍を続ける創作舞踊家・能藤玲子氏が、彫刻家・砂澤ビッキの代表作《神の舌》を舞台美術として挑む新作が2026年1月23日(金)〜25日(日)に上演されます。
作品にどのような思いを込め、どのような世界が繰り広げられるのか?
能藤氏にお話を伺いました。

能藤玲子
Reiko Noto
1931年網走市生まれ。6歳から9年間日舞藤間流に入門。1949年網走女子高等学校卒、網走市第二中学教員。1951年現代舞踊家・邦正美氏に師事。1959年札幌に創作舞踊研究所を開所。94歳の現在まで札幌での定期公演の他、東京などで新作を次々発表。芸術祭優秀賞、札幌市民芸術賞、現代舞踊フェスティバル優秀賞、北海道文化賞、松山バレエ団芸術賞、江口隆哉賞など受賞多数。海外公演もニューヨーク、ギリシャ、パリ、モスクワなど多数。
砂澤ビッキ
Bikky Sunazawa
1931年旭川市生まれ。1952年阿寒湖畔に移る。その後、鎌倉にて澁澤龍彦らと交友するとともに、モダンアート協会展を中心に作品を発表。1959年に旭川に戻り、1967年に札幌にアトリエを構える。1978年末から音威子府村筬島の小学校廃校をアトリエとし、豊かな木材資源をもとに、ダイナミックな造形の大作を制作。1983年10月から3ヶ月間、カナダのブリティシュ・コロンビア州に滞在。1989年1月、57歳で逝去。
——今回の『神の舌—夢の入口』に取り組んだ経緯をお聞かせください。
2017年に神奈川県立近代美術館で砂澤ビッキさんの彫刻展が開催され、そこで踊る機会をいただきました。展示室の最初の部屋に《神の舌》が展示されていて、そのすごい存在感に創作意欲を刺激され、この作品と踊りたいと思ったんです。その思いを以前から話していて、昨年この企画が具体的に動き始めました。
——この作品にはどのような思いが込められていますか?
現代は飽食の時代と言われていますが、私の少女時代、戦中や戦後は食べるものがなく、ジャガイモやカボチャ、トウキビ、イナキビなどを食べて生きながらえてきました。世界的に見ても、現代では戦争している国もあれば、貧困に苦しんでいる国もあります。そういった危機感や飢餓感を、今回の作品に投影しようと思っています。
——現時点における舞台の構成や演出の狙いについてお聞かせください。
今回はできるだけ多くの方に参加していただきたいと思い、外部から4人の先生を招き、私のほかに11人のダンサーが出演しますが、一人ひとりが内面的に食に対する危機感を抱き、それぞれの個性で表現してほしいと思っています。
——今回の舞台美術で使う彫刻作品《神の舌》にはどのような思いをお持ちですか?
私は、舌というものを“夢の入口”だと思っています。もちろん食べることもそうですが、私が札幌で研究所を始めたころはモダンダンスがほとんど理解されておらず、それを説明しなければなりませんでした。だから、私にとって舌は思想や感情を伝える唯一の武器。今回は《神の舌》から、食に対する危機感を表す作品にたどり着いたのです。
——以前から砂澤ビッキの作品と関わっていますが、どのような点に惹かれているのでしょう?
私とビッキさんは同い年で、ほんのちょっとの短いお付き合いで彼は逝ってしまいましたが、今でも何か気持ちが通じ合っているように感じるんですね。今回《神の舌》は彼自身だと思い、砂澤ビッキにこの作品を捧げようという気持ちで踊りを創っています。

——長年にわたり創作舞踊を創り出してきた中で、今回の作品はどのような位置づけになりますか?
今までは私自身の思想や感情をテーマとした作品を創ってきましたが、参加しているダンサーがそれぞれ個性的に主張できる作品にしたいと思っています。これから北海道のモダンダンスを支えていく人たちが、本当のオリジナルなものを創り上げる力を持ち、とにかく踊りに対する情熱を持ってほしい。それが、今回の11人に対する希望です。
——今回の作品が目指す世界観はどのようなものでしょうか?
踊りの本質といいますか、音にも合わせない、拍子も合わせない、あくまでも個性的なものを生み出す力を追求しています。踊りから一人ひとりの人格、生き方の方向が見えるようになればいいなと思っています。
——能藤さんが舞踊で大切にされていることは何ですか?
あくまでも個性ですね。人の真似は絶対にしないこと、自分のものを創って踊ること。指導してきたダンサーたちにも、影響はされても真似してはいけないと伝えてきました。
——読者や公演を楽しみにされている方々へメッセージをお願いいたします。
肉体は素朴なもの。ダンスは自分を赤裸々に見つめないとできませんし、自己の思考を表現するのがモダンダンスです。それぞれの創造性を発揮して、《神の舌》とともに、心に響く舞台をお届けできたらと思います。
能藤玲子創作舞踊団
神の舌―夢の入口
クリエイティブスタジオ
2026 1.23[金]-1.25[日]
23日[金]19:00開演 24日[土]15:00開演 25日[日]13:00開演
※開場は開演30分前 ※予定上演時間約1時間(休憩なし)
[全席自由・税込]
一般4,000円 U25 2,000円
※未就学児入場不可
アフタートーク
2026年1月24日[土]終演後(20分程度を予定)
※1/24公演チケットをお持ちの方のみ対象、参加無料