——まずは「hitaruオペラプロジェクト」についての思いをお聞かせいただけますか?
針生:地方都市にこれほど大規模な劇場があるのは素晴らしいことですし、Made in 北海道のオペラを創造しようというプロジェクトはとても意義のあることだと思います。
倉岡:このプロジェクトは、さまざまなキャリアを持つ音楽家が一丸となって創造する素晴らしい取り組み。若手音楽家の育成にも力を入れ、学生や若いスタッフに伝統芸術を継承するサイクルが生まれて、とてもいいエネルギーが発せられています。
髙橋:hitaruが誕生したのは私が声楽を始めた学生のころで、憧れの劇場でオペラに出演できるのはとても光栄なこと。外で勉強した成果を地元・札幌で披露することに特別な思いがあり、活躍されている先輩方や同年代の人たちと交流できることをうれしく思います。
——これまでの稽古の雰囲気はいかがですか?
倉岡:マエストロはじめキャスト、音楽スタッフそれぞれが強烈な個性を持っていて、ひとたび音楽稽古が始まると作品に没入して力と個性を発揮する、活気と刺激にあふれる稽古場です。
針生:北海道の皆さんはどこかでつながっていて、現場は和気あいあいとした雰囲気ですね。若手のキャストが出てきたな、頑張っているなという印象で、若いエネルギーを感じてうれしく思います。
髙橋:初めて稽古場に行ったときは緊張しましたが、針生さんに「何回もオペラに出演している人みたい、緊張しているように見えないよ」と言われ、自然とリラックスできました。稽古場の雰囲気がとても温かいですね。
——「ドン・ジョヴァンニ」の物語について、どのような感想をお持ちですか?
針生:モーツァルトの「ドン・ジョヴァンニ」は大本の原作とは異なり、作品にはドン・ジョヴァンニに傷つけられた女性たちが多く登場しますが、彼女たちがとても魅力的に描かれていることによって、より成熟した物語になっていると思います。
倉岡:当時の女性たちは自由がなかった状況に置かれていたと思いますが、その中でも自分たちがより幸せに生きるための環境を手に入れようと必死に生きて、それぞれの女性たちが精神的な成長を遂げていく作品。モーツァルトは、女性が自立することが当たり前になる世の中を見据えていたのかもしれません。
髙橋:ドン・ジョヴァンニが主役ですが、彼の内面より3人の女性たちの方が掘り下げて描かれているオペラです。女性の内面的な部分に寄り添い、「こういうことあるよね」「こういう人いるよね」と現代の人にも身近に感じられる作品だと思います。
——ご自身が演じるキャラクターについて、どのような思いをお持ちですか?
髙橋:ツェルリーナは平民という立場で、危機的状況の中でも心に傷を負わずに切り抜けた女性。現代的な考え方、当時の村娘らしからぬしたたかさを備え、その武器を存分に振るっている感じがします。
倉岡:ドンナ・エルヴィーラは、由緒正しい上流階級の信仰心が深い家庭で厳しく育てられ、修道院で過ごした真面目な女性ですが、内面にはものすごい情熱と自由への切望を秘めています。そこにジョヴァンニが現れ、彼女は修道院を飛び出し、持っている限りの情熱を注ぐ。それが極限に達したとき、その思いは母性のような真実の愛へと変わります。
針生:ドンナ・アンナは、冒頭でジョヴァンニに愛する父親を殺され、彼女の時間は止まってしまいます。劇中のアンナはずっと暗く、演じていて苦しくなることも多いですね。ジョヴァンニと相対しながら止まった時間を生きる、とても特殊な役柄だと思います。
針生:ドンナ・アンナは、冒頭でジョヴァンニに愛する父親を殺され、彼女の時間は止まってしまいます。劇中のアンナはずっと暗く、演じていて苦しくなることも多いですね。ジョヴァンニと相対しながら止まった時間を生きる、とても特殊な役柄だと思います。
——それぞれの役柄から見たドン・ジョヴァンニ像とは?
髙橋:ツェルリーナの前にジョヴァンニが現れたとき、彼のカリスマ性に惹かれ、たぶんオーラが見えていたはず。しかし、彼の置かれている立場が傾いていると感じた瞬間に思いは冷め、その立ち回りに彼女のしたたかさを感じます。
倉岡:エルヴィーラにとってジョヴァンニは、かごの中にいた自分を大空に放ってくれた愛おしくてたまらない存在。どんなに彼が悪行を働いても本当に悪者だとは思えていないのではないかと感じます。
針生:アンナにとってジョヴァンニは、父を殺されショックを与えられた人間です。だけど、魅力的な人物だと心の奥では感じていて、相当な葛藤があったはず。彼女は復讐を願いますが、彼が地獄に落ちた後、喪失感を抱えて生きていくと予感させます。
——今回の舞台の見どころや意気込みをお聞かせください。
髙橋:「ドン・ジョヴァンニ」は、作品の素晴らしさはもとより、今回の舞台に関わるすべての方々の力量が傑出したプロジェクト。素晴らしい方々が一体となって創造する舞台が楽しみで、私もその一員として本番に向けて頑張ります。
倉岡:モーツァルトの3大傑作オペラと評される「ドン・ジョヴァンニ」は、台本も音楽も素晴らしく、“神の次元”だと感じています。それだけ求められるものも大きく、少しでもその領域に近づけるよう表現力を磨く努力を重ねていきたいと思います。
針生:「ドン・ジョヴァンニ」という作品名は聞いたことがあるけど、内容が難しいと思われている方が多いと思いますが、そういう方にこそ見ていただきたいですね。初めて見る方に「すごいな!」と思ってもらえるような舞台を、全力でつくり上げていきたいです。
針生 美智子
Michiko Hariu
◎ドンナ・アンナ役
小樽市出身。札幌大谷短期大学卒業。同専攻科修了。文化庁オペラ研修所修了後、ローマで研鑽を積む。これまで二期会『魔笛』夜の女王、日生劇場『セビリアの理髪師』ロジーナ、日生劇場及び新国立劇場鑑賞教室『夕鶴』つう、A.バッティストーニ指揮『アイーダ』巫女長、新国立劇場『ジャンニ・スキッキ』ネッラ、『夜鳴きうぐいす』料理人等を演じ、いずれも好評を博している。第2回藤沢オペラコンクール第1位。第5回道銀芸術文化奨励賞、平成21年度小樽文化奨励賞、令和2年札幌市民芸術祭大賞等受賞歴多数。札幌大谷大学教授。二期会会員。
倉岡 陽都美
Hitomi Kuraoka
◎ドンナ・エルヴィーラ役
夕張市出身。昭和音楽大学卒業後、ロータリー財団国際親善奨学生としてイタリアへ渡る。ボイト国立音学院入学。在学中ブッセート・ヴェルディの声コンクール入選。パルマ市新人演奏会出演。同音楽院を満場一致の満点及び賛辞(最優秀)で卒業、助手を務める。パルマ王立歌劇場附属研修所にて2年間研鑽を積み同劇場デビューを果たし国内外多数の公演に出演。15年間の研鑽と活動を経て2018年帰国。第31回道銀芸術文化奨励賞受賞。第1回 hitaru オペラプロジェクト『フィガロの結婚』伯爵夫人役、hitaru creation『Creative Art Mix Vol.2』に出演。藤原歌劇団正団員。
髙橋 茉椰
Maya Takahashi
◎ツェルリーナ役
札幌市出身。東京音楽大学声楽演奏家コース卒業、同大学院声楽専攻オペラ研究領域修了。在学中、給費奨学生に選ばれる。サントリーホール オペラ・アカデミー第6期修了。 第6回江戸川新進音楽家コンクール第1位、第34回ハイメスコンクール最優秀賞、令和4年度札幌市民芸術祭新人音楽会にて大賞並びにオーディエンス賞を受賞。北海道二期会創立60周年記念公演『こうもり』アデーレ役で出演。川原敦子、釜洞祐子、G.Sabbatiniの各氏に師事。江戸川演奏家協会、ハイメス、北海道二期会各会員。
3段重ねのクラシカルなティースタンドに、MORIHICO.の魅力をぎゅっと詰め込んだアフタヌーンティーセット。「もりひこ菓子ほ」のパウンドケーキと珈琲カヌレ、「MORIHICO.藝術劇場」の苺のブランマンジェとフルーツサンド、「DAFNE」の前菜二品に復刻キッシュロレーヌと、MORIHICO.系列店の味を一度に楽しめます。たっぷりのコーヒーや香り高い紅茶と共に、至福の時間を過ごしてみては。
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[提供店舗]MORIHICO.藝術劇場
※ホットドリンクはポットでの提供。1名から注文可。予約可
※写真のティーフードは2名分
hitaru オペラプロジェクト
「ドン・ジョヴァンニ」
指揮・フォルテピアノ:園田 隆一郎
演出:粟國 淳
管弦楽:札幌交響楽団
2025 3.7[金]/9[日]
札幌文化芸術劇場 hitaru
① 3月7日[金]開演18:00
② 3月9日[日]開演14:00
※開場は、各開演時間の1時間前
全席指定・税込
S席14,000円、ペアS席26,000円〈平日〉、
ペアS席27,000円〈休日〉、A席11,000円、
ペアA席20,000円〈平日〉、
ペアA席21,000円〈休日〉、
B席8,000円、C席6,000円、D席5,000円、
U25席2,000円〈各席、S席を除く〉
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